年刊三本ローラを作る04号:片持ちはりに働く等分布荷重
本号では、等分布荷重が働いている片持ちばりのせん断力・モーメントについて解説します。
片持ちはりに働く等分布荷重
図1に等分布荷重がさようしている片持ばりを示します。
はりの長さは\(L\)で、全体に\(w\)[N/m] の力が作用しています*1。
さて、前号でははりの開放端に集中荷重が作用していたため、計算がとても楽でした。しかし、今回考える等分布荷重は、分布しているため「長さ」という概念が生じます。等分布荷重で重要なのは、この「長さ」の概念です。
では、積分をつかって考えていきましょう。
前回と同様に、開放端からある距離\(x\)で切り取った図を図2に示します。
せん断力\(S\)に関して考えてみましょう。この切り取った断面\(A\)では、\(A\)から左側の分布荷重\(w\)によってせん断力を受けています。微小区間\(d\xi\)では\(wd\xi\)が加わっているとすると、
\[S=-\int_0^x wd\xi=-wx\]
となります。考えてみれば、等分布荷重では荷重が一定なので、せん断力は距離に従って線形的に増加しているというのは当たり前だと思います。\(x\)にはりの長さ\(L\)を代入すると、固定端でのせん断力\(-wL\)が求まります。
では、同様にモーメント>\(M\)を考えます微小区間\(d\xi\)において\(wd\xi\)が作用していますので、断面\(A\)から\(d\xi\)までの距離\(x-\xi\)の積が微小区間\(d\xi\)のモーメントとなります。すなわち、
\[M=-\int_0^x w(x-\xi)d\xi=-\frac{wx^2}{2}\]
となります。\(x\)にはりの長さ\(L\)を代入すると、固定端でのモーメント\(-wL^2\)が求まります。
*1:はりの計算では奥行きを(今のところ)考慮していないので、単位は [N/m] となります。
年刊三本ローラを作る03号:片持ちはりに働く集中荷重
本号から次号にかけて、片持ちはりに働く力について説明したいと思います。
片持ちはりに働く集中荷重
片持はりとは、前号で示したとおり図1の様に片方が固定端支持、もう片方が開放端になっているはりのことです。
片持ばりでは、この固定端支持から開放端までのどこかに集中荷重か分布荷重、あるいはその両方が働いています。
ではここで、図2のような開放端に集中荷重がはたらいている片持ばりについて考えます。
ここで、計算をしやすくするために、開放端からある程度の距離\(x\)までを切り取って考えます(図3)。
はりが平衡状態にある*1ときは、
- はりに作用している力の総和はゼロ
- はりのすべての点におけるモーメントの総和はゼロ
の2つの条件が満たされています。
固定端には荷重\(W\)が作用しているので、この2条件を満たすには、荷重\(W\)に対して内部に釣り合う力と釣り合うモーメントが作用していなければなりません。
荷重\(W\)に釣り合う内部のせん断力を定義し、これを\(S\)とおきます。
同様に荷重\(W\)によって発生するモーメントに釣り合う内部のモーメントを定義し、これを\(M\)とおきます。
また、切り取る断面と、見る方向によってせん断力\(S\)の正負が入れ替わる性質があります。面倒なので、本ブログでは図3のように、
切り取る断面を右から見るときに下向きのせん断力を正、反時計回りのモーメントを正
とします。
釣り合いの条件より、
\[S=-W\]
\[M=-Wx\]
となります。
荷重\(W\)によって発生するせん断力\(S\)は開放端から固定端まで一定ですが、モーメント\(M\)は固定端に行くにしたがって線形的に大きくなります。
言葉で言ってもわかりにくいので、図示します。
せん断力を表したグラフをSFD (Shearing Force Diagram)、曲げモーメントを表したグラフをBMD (Bending Moment Diagram)といいます。
やはり図示すると一目瞭然ですね。
*1:外力が加わっている状態でも移動や回転をしない
年刊三本ローラを作る02号:強度設計の基礎の基礎
強度設計は機械のどの分野?
機械工学では熱力学・流体力学・機械力学・材料力学の4つの力学は四力と呼ばれ、機械工学の基礎力学として重要性が非常に高い分野であると言われています。ざっくり分野説明すると
- 熱力学(熱力):圧縮や膨張に関わる仕事量やエントロピーの変化を解析する
- 流体力学(流力):物体の周りの流れや圧縮時の挙動、流体自体や流体がさせる仕事を解析する
- 機械力学(機力):物体の振動
- 材料力学(材力):どのくらいどうしたら壊れるか
こんなかんじです。加熱・発熱・排熱をしない、ポンプを使わない、振動を気にしなくていい設計の場合、使うのはほとんど材力のみです*1。
スクラップアンドスクラップ
今日では一部の材料で結晶構造の解析による予想強度と実際の強度が一致するようになりました。しかし、まだまだ多くの材料では破壊強度などは実際に壊して確認するしか方法がないというのが現状です。
つまり、全部なんでも、ぶっ壊すのです。スクラップアンドスクラップ。それが機械の道なのです。
業が深い。
さておき、材料力学の分野では材料に加わる力を解析します。この加わる力と材料が壊れる力が一致したとき、その部材(部品)は壊れます。
材料力学では、必ず応力σ(シグマ)を扱います。応力は圧力と同じ次元(~単位)をもつ量です。力をP、力を受ける断面積をAとしたときに
で表されます(図1)。単位は[Pa]ですね
はりのあるお話
材料力学では、ほとんどの構造部材の計算を図1のような棒材(断面形状は任意)と「はり」の組み合わせとして考えます。「はり」というと一般に家屋の構造を保つために使われてる部材のことを指しますが、材料力学では
断面に比べて軸線方向の寸法の大きい部材が適当な方法で支持され、軸線に垂直な荷重や偶力を受ける時、この部材をはりという。言い換えれば曲げを受ける細長い部材がはりである。
と定義しています。はりの支持方法には三種類あります。図2--4に模式図を載せました。
この内、移動支点と回転支点は、単純支持と呼ばれます。
各支持方法によって、色々考慮しなければならない力と無視して良い力が発生します。
まず、各支持方法において作用する外力(負荷による力)をWとします。
単純支持移動支点の場合は、Wによって床からの垂直反力Rが生じます。単純支持回転支点の場合は、床からの反力に加えて、軸方向への移動ができないため軸方向(アキシャル方向)に水平反力Nが生じます。
固定支持の場合、端部を完全に固定しているため、支点部分では移動も回転もできません。そのために支点には反モーメントとしてMが作用します。
なお、外力Wが軸方向に作用していない場合は水平反力Nを無視して取り扱って構いません。実際の設計でも、はりが使われる部材ではできるだけ横方向の荷重のみになるように設計するため、軸方向の荷重は考えなくてもよく、移動支点と回転支点は特に区別しないことが多いです。
はりの計算においては、この3つの支持の組み合わせ*2によってはりの種類が区別されます。
はりの種類は
- 片持ばり
はりの片方が固定支持もう片方が自由端(支持がなく開放状態)になっているはり。固定端では変位、角度がゼロ(曲がらない)となる。回転がないため反モーメントを考える - 単純支持はり
片方が回転支点・もう片方が移動支点となっていて、支持部においては変位はゼロであるが角度を考える - 両端固定ばり
両端が固定されているため、両端で変位ゼロ、角度もゼロとなる - 連続はり
支点が2つを超えるはり
の4つに分けられます。
はりの支点と支点の間の距離をスパンといいます。スパンには極めて狭い範囲に集中的に作用する集中荷重と、一定の範囲に分布する分布荷重が作用します。橋もスパンがありますね。明石海峡大橋はスパンの長さが世界一、すなわち、世界で一番長い橋です。
さて今号では、応力とはりの種類についておさらいしました。機械系専攻の学生ならば基礎的なことですが、半年くらいかけてやることを色々とすっ飛ばしてここまできました。
次号もお楽しみに。
そんなことより
(出典)
中島正貴, 材料力学 機械系教科書シリーズ, 2010, コロナ社, pp65--67
年刊三本ローラを作る01号:設計仕様に基づいた概略図
すっかり注釈つけるの忘れていましたが、株式会社デジュールスタンダードって会社はありません。便宜上適当につけました。
なお、株式会社デファクトスタンダードって会社はあります。
デジュールスタンダード(標準規格)
デファクトスタンダード(事実上の標準)
面白い会社名ですね。なお、株式会社ベストエフォートってのもあるようです。
面白い会社名ですね。
どうしてこんな名前にしたんでしょう......。
仕様
- ホイールベース
- ローラの幅
- 伝達機構
- ローラの材質
も決まったので、まずは設計に必要な概略図を出します。
仕様から今描ける内容はホイールベース(985 mm)とローラの幅(600 mm)です。
概略図はこんな感じ
この概略図では、ローラの直径をとりあえず120 mmとしてます。明確な根拠があるかというと全くなくて、「最初に120 mmもとっときゃとりあえず応力計算で足んなくなるなんてことはないだろう」という大雑把な勘。
計算してて応力が大きくて強度やばいってことになったらローラの直径を増やします。逆に、オーバースペックということになれば、直径を小さくします。
参考記事
年刊三本ローラを作る00創刊号:仕様
なぜ(ただし設計製図のみ)なのか
前回お話しをしたとおり、設計製図の話題提供で行きたいと思います。
お題はズバリ、自転車用のトレーニング器具である三本ローラを作ること。
ただし設計製図のみ
これ重要。
なんで実物を作らないかというと、メイン部品であるローラが高い。
しかも、直径がでかいやつってなかなか売ってない。
例えばこれ。直径Dは約110 mmありますが、一本6,000円台ですので3本揃えるとそれだけで18,000円を超えます[1]。
故に買えない!! 悲しい!!
設計に必要な条件(=仕様)はどうなるのでしょうか。
- ホイールベース
- ローラの幅
- 伝達機構
- ローラの材質
こんなところでしょうかね。
次章から設計に入ります。
設計条件と制約
車種の決定
ホイールベースを固定すると計算が簡素化可能になるため、使用する自転車の車種は1車種として考える。車種は設計者が乗っているAnchor RA6とする。Anchor RA6のジオメトリを図1に示す。
ローラの幅
落車する可能性があるため、余裕をもってローラの幅は600 mmとする。
伝達機構の決定
静音化のため、ゴムではなくタイミングベルトを使用する。タイミングベルトを使用するにあたって、タイミングプーリが必要となる。これの歯の強度計算を行う。
ローラの材質
ローラの材質は帯電防止のためにアルミニウム製とする。なお、ベアリングにかかる負荷は考えない。
[2]
関連記事
Dura Aceのペダル:PD7810のメンテナンス
よーし、パパ今からPD7810のメンテナンスしちゃうぞー!
最初はPD5700を使ってましたが、ひょんなことからPD7810を中古ですが入手出来ましたので、今はDuraAceペダルを使っています。
洗車も3回はしましたので、そろそろ回転部のメンテナンスが必要な時期です。
必要なものは
- 17 mmのスパナ(ハブコーンレンチなど)
- スナップリングプライヤー
- 20 mmのスパナ(これはSHIMANO純正がベター)
- グリス
- パーツクリーナー(ディグリーザー)
- ピンセット
- ソルダリングエイド(あれば)
です。
実例を図1に示します(パーツクリーナーは載ってません)。
図1 メンテに必要なもの一覧
図2 メンテに必要なもの一覧(別角度から)
図3 使う工具類
でははじめましょう。まずは、20 mmのスパナでロックリングを外します(図4)。このとき、右ペダルは逆ネジ、左ペダルは正ネジです。
図4 ロックリングを外す
すると、手で緩められるようになるので、17 mmのスパナを使わなくともシャフトが抜けます。シャフトが抜けました(図5)。
図5 生き別れとなったシャフトとペダル本体
シャフトは図6のようになっています。左から、玉押さえ、ロックリング、ボールベアリングx17、スナップリングの順です。
図6 シャフトの構造
シャフトを抜いたあとも、プラスチックのシムとニードルベアリングが出てきます(図7)。また、その奥から9個のベアリングが出てきます。
図7 プラスチックのシムとニードルベアリングが追いかけて出てきた
出てきた部品を全部並べました(図8)。
図8 全員勢揃い
パーツクリーナーなどで洗浄したらどんどん組み付けていきます。まずはすべての部品にグリスをうっすら塗ります。また、ネジ部もきっちりとグリスを塗って防水性をの向上を図ります(図9)。
図9 玉押さえのネジ部にもグリスを塗ります
その後に、シャフトに防水用のゴムシールをグリスを塗ってつけます(つばの幅が広い方がクランク側です)。玉押さえとロックリングを組み付けて、シャフトにつけます(図10)。
図10 シャフトの組付け
ボールベアリングを慎重に詰め、グリスを載せます(図11)。スナップリングをつけて玉押さえを回すと全体にグリスが行き渡るます。
図11 グリスおいちい
その後、逆の順番で組み付けて終了です。
PD7810では、玉当たり調整のスイートスポットはかなり広いので、あまり神経質にならなくてもヌルヌル状態が楽しめます。
参考記事
クリート交換しました
物欲がとどまるところを知らないので、クリートを買いました。
初めてシマノのSPD-SLというビンディングペダルを使ったのは一昨年ですが、あのペダルとの一体感(ほんとに一体化する)は忘れられませんね(でもそれからほとんど載ってません)。
クリートも使っているうちに摩耗してはめ込みにくくなる/外れやすくなるので、数ヶ月周期で替える消耗品です。前回変えてから6ヶ月位経ち、そろそろ標準の黄色クリートじゃなくて別なのも使ってみたいなと思い、色自体も替えることにしました。
新しく購入した青クリート
交換に必要なもの:4 mmの六角レンチ
外したこれまで使ってたクリート。キチャナイ。でもまだ使えるので予備に